作品鑑賞と解説2024
第68回現代書道二十人展の図録解説
書壇最高峰の「二十人展」の図録が手元にあると思いますが、「ただ見てるだけ」だとある会員が言ってました。
確かに最高レベルの作品ですので理解するのには、ある程度の知識が必要だと得心致しましたので、少しずつ解説してゆきます。
<真神 巍堂先生>
昨年の読売展での席上揮毫を覚えています。運筆の速度に驚きました。あのスピードで線質が緩まない筆力に教えられました。
「行草」の極致ではと得心致しました。
<星 弘道先生>
色画箋にたっぷりとした多墨での厚みに含墨の大切さを示唆してくれます。結体の間(余白)にも教えられます。
例年出品される写経も色々な形式があるのを教えてくれます。
<中村 伸夫先生>
今井凌雪先生の師風を更に昇華させ、独特の間架の余白で懐の広い豊かな結体を表現されています。
<土橋 靖子先生>
先生がおっしゃる「チャレンジする場」を存分に発揮しての書作に敬服致します。
筆力の勁さと落筆の高い「点」に着目しました。また「董其昌」を彷彿させる漢字作品に驚嘆し、漢字の素養を実感致します。
調和体作品の間(間架)にも教えられます。
今年、日本藝術院会員(五人目)に選ばれたのも必然だと思います。
<高木 厚人先生>
潤渇の妙技にいつも教えられるが、昨年の54首の和歌を屏風に仕立てた精神力を今年も12首の色彩豊かな屏風に仕立てた継続に精神力の高境を見ます。
<樽本 樹邨先生>
漢字本来の字形の安定型(台形)で重厚さを表し、余白の美で寛容さを示唆されました。
<高木 聖雨先生>
我が師曰く「文字にある余白を活かした工夫をせよ」最近頓に多言するようになった。余白を整えると文字が動かず、広げると作意が見え品位が保てない。
P.37「凱風」は示唆に富んだ高教である。
<黒田 賢一先生>
いつもながらの筆捌きの巧みさに敬服。
聞くところよると杉雨先生に薫陶を受けたとか、漢字の筆捌きに相通じる呼吸を感受致します。余白への疎密、働きかけにも学ぶ所が多いです。
P.33の筆捌きに着目。
P.34の行間の余白への極限までの働きかけに脱帽。
<角元 正燦先生>
高木聖雨先生と師を同じくするが、醸す雰囲気は全然違い柔かな運筆です。
P.26の傳山を彷彿させる草書作品に着目したい。
<倉橋 奇艸先生>
北海道の阿部和加子氏と同門だが、独自の運筆の筆致にリズム感があり古筆を礎にした書風は類を見ない。3年前に会を創立させた。
P.29、P.30は調和体と見紛うばかりで新しい指針を示している。
<尾西 正成先生>
久々に40歳台の若手の登用である。
ご本人のコメントにもあるが書道家として「20人展」に出品できるのは誉れの極みと拝察します。
横画の統一感に吉川先生(P.68あとから解説します。)の師風を見る。
入筆に村上三島先生、古谷先生の師風を見る。
若さ溢れる運筆に爽快感があり、払いの捻りに独自性を見ました。
<尾崎 蒼石先生 篆刻>
印影(朱色)と側款(印の側面に彫る落款、黒色の拓)を並べて発表するのが正式です。
現在は側款を墨書するのが一般的ですが、格調の高い書作だと印を引き立てますが、逆効果も散見されます。
落款は「名」だけではなく色々な情報を入れます。
P.80の綿引先生のも参照してください。
<井茂 圭洞先生>
筆力のある穂を極限まで駆使した線質に驚嘆する。漢字の素養がなければ出来ない運筆と思う。
先生が拘っている「し」の表現を最終章で最大の見せ場にした感覚に敬服しました。
P.11
ここでも「し」の表現に着目したい。P.8では余白を凝縮させ、ここでは余白を解放している。先生が常に言っている「要白」である。
<新井 光風先生>
P.4
相変わらずの「飛墨」の巧さを、間架の空け方の妙、線質の千変万化、これが全て直筆の運筆での表現である。
P.5
線の重ね方が巧みで重厚である間架をつぶれる寸前まで圧縮している。画を離す処も所謂「風が通る」流麗な余白である。
点の落筆(落とす高さ)の緩急にも着目したい。
今年は楷書作品が無く少し寂しく思う。
「春聯」を書き上げました。
学童部は今、「書初め」の練習中です。
明年1月上旬の提出を目指し頑張っていますが、中国出身の呉凱さん(春に入会若い)は、「春聯」を書き上げました。
旧暦の正月にドアに貼るのだそうです。
私も中国の風習を聞きながら手本書きをしたので勉強になりました。
「福」の貼り方には、ご本人の註釈がありますので合わせて一読下さい。
註釈(呉凱氏)
中国語の「逆」は「倒」です。「倒」の発音は「来る」と同じで、「福」を「倒」にすると、福が来る。
そのため中国では、「福」を逆さまにする伝統があります。
※福倒=福来る
日本の書展、出品作品の解説
「深夜に聴くエディトピアフ秋の聲」
「夢抱く少年仰ぐ天高し」
俳句=「人物シリーズ」でエディトピアフを題材にしました。天才歌手ともう一句「少年」を合わせてみました。
書=中央に片仮名が布置されるので緩急、余白に苦心しましたが高木先生から初見で合格が出たので完成度は高いのだと思います。
青色=余白、赤色=左右への働きかけ、紫色=縦長、緑色=幅広
会員の森田さんから額縁の寄贈を受けました(7面)
住居を移転するので、飾る所がないとの事で受け入れまして、額に入っていた作品を小さく書き直し小品額と一緒にお返しに送りました。
<小作品の解説>
余白が大切です。周りの縁を空けること(赤斜線)。行間の余白(緑の線)、文字の大小(青線)、何より読み易さが肝要です。
中西麻僖さん(短歌)は順子さんの妣上様。
安曇野涼風扇子展の依頼で扇面を出品しました。
金沢での僥倖
3月下旬初めて金沢を訪れふと立ち寄った「竹筆」の店。私も色々な素材の筆は持っていますが、竹筆は持っていなかったので時間をかけて吟味していましたら店主に話しかけられました。
金沢のこと、竹筆のこと、書道のことなど含蓄のある話を聞け有意義でした。
私が書家であること、教室を開いていることを伝えると学生に渡してほしいと沢山の竹筆などを頂戴致しました。
帰ってきて大学生、高校生に渡し、礼状を書くように言いました。私もその竹筆を使って2作を書きお礼に進呈しましたその作品と解説を載せます。
掛軸を二幅誂えました。
茶の湯を嗜む方からの依頼
「和敬清寂 秋亭逸人」
・茶道の心得を示す標語
・千利休が定めた「四規」として重要
<創意>静かな動きの中に懐の広さを表現
「喫茶去(きっさこ) 秋亭道人書」
・禅語で分け隔てなく、お茶を点てる意
・茶の湯では「床の間芸術」と言い掛軸、花、香など伝統美に徹した作法があり奥深いものがある
・制作にも知識と教養が必要です。
<創意>「和敬清寂」の対として飛墨、直筆、側筆など多様な技法を使い見る度に新しい発見がある様にした。